次の日。二人はある場所へ向かっていた。
昔ながらの造りの家のチャイムを鳴らし出てきたのは、慶輔の両親だった。
「どうぞ、はいって。」
慶輔の両親が多香子と渉を家の中に招く。
あらかじめ、多香子が渉と一緒に訪ねることは伝えていて、慶輔の両親はどんな話なのか、想像がついていた。

和室に通された二人は並んで慶輔の遺影の前に座り、一緒に手をあわせた。
その二人の姿を慶輔の両親が見守っている。

慶輔が目を開けると多香子はまだ手をあわせて何かを報告しているようだった。
渉はそんな多香子の隣で写真の中の慶輔に目をむける。

慶輔の両親は多香子にはこの先の長い人生があるからと、慶輔の遺影は実家に引き取った。

渉はちゃんと慶輔にも、慶輔の両親にも自分たちのことを報告したかった。