たとえ君が・・・

「これ、つまらないものですが。」
渉は手土産まで用意していた。
「わざわざありがとう。次に来るときは手ぶらで来てね?」
「出ないとうちにいれないぞ?」
多香子の両親の温かさに、渉の緊張はすぐにほぐれた。

「橘さん」
「はい。」
多香子が母と一緒に昼食の支度を始めると渉に父が話しかけた。
「娘のことをよろしくお願いします。」
深々と頭を下げる多香子の父に渉は焦った。
「娘はご存じの通り、初婚ではありませんし体も・・・流産で傷ついています。」
「・・・」
「私たちは多香子が二度と笑うことはできないと思っていました。結婚ももうできないだろうって・・・。」
多香子の父の表情が痛々しいほどに切ない。
「娘には幸せになってほしい。そのために、私たち夫婦にとってはあなたは希望なんです。」
「・・・」
「娘をよろしくお願いします。」