たとえ君が・・・

「一緒に死んじゃいたかったんだ・・・」
患者が消えそうな声でつぶやく。
渉は多香子と患者の様子を見て、とっさに警護官と刑務官に話しかけた。
今後の治療に関してと話を伸ばそうとしているのが多香子にはわかる。

患者からの注意がそれたところで多香子は再び患者の方を見た。

「こんな母親から生まれる子。かわいそうじゃん。」
「・・・だから赤ちゃんを・・・?」
「お腹にいるままに、私が死んだら、この子だけ助かっちゃうかもしれないじゃん。だからさ・・・。それに、顔、見たいじゃん・・・。」
患者の女性の瞳から涙が伝う。

患者の罪の重さを知らない多香子には無責任なことは言えない。
軽い罪ならばすぐにでも母親としてこどもを育てられるかもしれない。でも、重罪ならば一生子供とは会えないかもしれない・・・。

「私語は慎んでください。」
警護官の一人が多香子たちに気が付き近づいてきた。