たとえ君が・・・

誰もいない院長室。ここには多香子と渉しかいない。
渉は隣に立つ多香子の手をそっと引いた。そして自分の膝の上に座らせる。

ぎゅっと多香子の体を抱きしめた。
「勤務中ですけど」
そう言っている多香子の言葉にはもう以前のようなとげとげしさは感じない。
むしろ少し照れているのが分かる。
「充電中。」
難しいケースばかりで気を張っているのは多香子だけではない。渉も同じだった。
「落ち着く・・・」
渉は多香子の胸に顔を埋めると大きく深呼吸をしながら目を閉じた。

多香子は渉の寝ぐせを指でなぞりながら微笑んだ。

いがいと渉は甘え上手だ。
そんなことを考えていた。