たとえ君が・・・

渉はそのパンフレットを開いて子供たちに見せた。
イラストが大きく入っているパンフレットには母親のお腹の中で赤ちゃんが成長する様子が記されている。渉はそのイラストを子供たちに見せながら話始めた。
「ママのお腹の中には赤ちゃんがいるんだ。赤ちゃんはこうして大きくなるんだぞ？先生は赤ちゃんが元気に生まれるようにって診察するんだ。」
子供たちは渉の話に夢中だ。
「ママはお腹の中で赤ちゃんを大切に育ててるから、お兄ちゃんたちもそんなママをさっきみたいに守れるか？」
渉の言葉に二人の子供は目をあわせてから頷いた。
「えらい。よし、どのくらい大きくなったか抱っこさせて。」
そういうと渉は立ち上がり二人の子供たちを一緒に抱き上げた。

多香子の心がじんわりとあたたかくなる。
渉は子供が好きだ。ただ好きだけでは産婦人科医は務まらない。
でも、どんなに忙しくても、過酷なケースを経験しても、子供が好きという気持ちに変わりはなかった。