たとえ君が・・・

屋上で熱い口づけを交わした日から、二人の距離は近くなっていた。

「次の患者のカルテです。」
「ありがとう。」
多香子と渉はいつものように阿吽の呼吸で患者を診察していく。
「お願いします。」
診察室に入ってきた夫婦の顔を見て渉は微笑んだ。

それは離婚予定で、一度は堕胎手術の直前までいった夫婦だった。

「その節は大変お世話になりました。」
妻が診察用の椅子に座るのを甲斐甲斐しく支えた夫は穏やかな表情でその横に立ち、渉と多香子に頭を下げた。

夫婦は話し合いをして、離婚をしないことを選択した。そして、赤ちゃんも出産することを決めた。

引き続き、出産までこの病院で経過を見ることになっている。