たとえ君が・・・

高水の妻は亡くなっている赤ちゃんをずっと抱っこしている。
「一生分の抱っこをしてあげられそうです。」
そう言って高水の妻は抱いている赤ちゃんの遺体を見つめる。高水夫婦の希望もあり、赤ちゃんの遺体は抱いて島への帰路につけるよう、手配してある。
「体はまだ回復途中です。休めるときにしっかり休んでくださいね。」
多香子はそう言って、高水の妻の腕をさすった。

初雪の降った日から5日が過ぎ、寒さは本格的になってきていた。

「ありがとうございます。瀬戸さんも島に遊びに来てくださいね。島の冬は暖かいですよ?」
「いいですね。ぜひ、生きたいです。」
「来てください。」
多香子と妻の会話を、いつの間にか聞いていた渉と夫は微笑んでいた。

「この病院じゃなかったら、先生たちに出会わせければ、もしかしたらこうしてこの子に笑顔を見せてあげることもできなかったかもしれません。」
「本当に心から感謝してるんです。出産も、出産後も私たちのわがままを聞いてくださいって。ありがとうございました。」
夫婦に渉と多香子は首を横に振った。