たとえ君が・・・

「退院、おめでとうございます。」
多香子と渉は病院の救急搬送口で高水夫婦を送り出していた。

本来、出産を終えた患者は病院の正面玄関から送り出す。しかし、生まれた赤ちゃんは”死産”だったため病院の霊安室から病院を出ることになった。赤ちゃんを島でおくりたいという夫婦の希望に、特別な車を手配し、病院の搬送口から高水夫婦と赤ちゃんの遺体を送り出そうとしていた。

「ありがとうございます。」
「本当に。何から何までありがとうございました。」
高水夫婦は深々と頭を下げている。
「体調のことや何かありましたらいつでもいらしてくださいね。お待ちしています。」
渉の言葉に高水の夫は微笑んだ。
「ぜひ、島に遊びに来てください。その時は最高のおもてなししますから。」
「楽しみです。」
そんな渉と高水の夫の会話の横で、高水の妻は多香子と話をしていた。
「この帽子。ありがとうございます。」
「いいえ。」
多香子は無脳症の赤ちゃんのためにと手作りの帽子を出産に備えて作っていた。