たとえ君が・・・

診察をしていても、渉の言葉を聞かなくても渉の欲しいものをすっと差し出してくれる。
多香子は看護師の資格も持っていて、手術室にも入ることができる。その時も渉の欲しい器具をすっと差し出してくれる。

「おめでとうございます。3人目のお子さんですね？」
渉の言葉に診察室にいた母親と2人の子供が笑顔になる。
「次は女の子が欲しくて。」
2人の子供は渉が取り上げた。2人とも男の子だ。
「お兄ちゃんになる準備はできてるか？」
渉は目を細めて子供たちの頭を撫でた。
「おっきくなったなぁ。」
そんな渉の聴診器に夢中な子供たちは自分たちが注射でもされるのではないかと不安そうだ。
「今日は注射じゃないぞ？先生はママの先生だから。」
渉の言葉に子供たちは「ママに注射しないで！」と渉をにらむ。
「ははっ」
豪快に笑いながら渉は子供たちの頭を再び撫でた。

すると多香子が妊娠に関するパンフレットを渉に渡す。