たとえ君が・・・

初雪が少しずつ積もり始めると渉は多香子の体から自分の体を離した。
「冷えちゃったな・・・」
そう言って多香子の手を引いて屋上の扉を開ける。
「ちゃんと拭けよ、頭」
「・・・うん・・・」
多香子の背中をそっと押すと渉は扉を閉めようとした。
「渉は?」
多香子が振り返りその名前を呼ぶ。
「久しぶりだな。俺の名前呼ぶの。」
渉がそう言って微笑む。
「少し頭、冷やしてから戻る。」
そう言って渉はポケットに手を入れたまま微笑んだ。

その表情があまりにも悲しそうで、寂しそうで、切なくて・・・
多香子は閉まりかけていた扉を再び開けて、渉の胸に飛び込んでいた。