それから数ヶ月後、藍は東北に帰っていた。休暇を正人からもらったのだ。

実家に荷物を置いた後、藍はある場所へと向かう。山に囲まれ、のどかな中にある墓地。迷うことなく藍は進み、あの人のお墓の前で足を止める。青磁のいるお墓だ。

「お兄ちゃん、久しぶり。帰って来たわ」

藍はそう微笑み、用意していた花を飾り墓石を綺麗に掃除する。東北に帰って来た理由の一つは、青磁のお墓参りをするためだ。そしてーーー。

「初めまして、如月大輔です」

如月刑事がお墓の前でペコリとお辞儀をする。藍は、恋人として如月刑事を家族に紹介するために東北に帰って来た。そして、一緒にお墓参りをすることになったのだ。

「お兄ちゃん、夢を与えてくれてありがとう。私、今すごく幸せよ。監察医として働いて、素敵な恋人もできた。……本当にありがとう」

藍がそう言った刹那、涙がこぼれ落ちる。藍はそれを手で拭うが、涙は止まらない。

青磁の未来を奪った犯人である福山美里には、死刑判決が下された。しかし、それで青磁が笑って帰って来てくれるわけではない。それを藍はよく知っている。