如月刑事と大河が何度も火花を散らせたが、飲んだり食べたり話したり、楽しい食事の時間は続いていく。

「なあ、藍」

如月刑事がこっそり藍の耳元で言った。

「帰りに少し話があるんだが……」

「わかったわ」

如月刑事の顔はとても赤くなっている。朝子と聖が何かを察したかのように、藍にニヤニヤとした表情を見せた。



如月刑事の車で藍は家まで送ってもらうことになった。車の中は静かで、藍は窓の外を眺める。

「話って?」

藍が沈黙を破って如月刑事の方を見ると、如月刑事は「待て!心の準備が……」とうつむいた。

また沈黙が訪れる。藍は如月刑事をジッと見つめた。その顔はお店にいた時よりも赤く染まっている。

如月刑事は車を停める。人気のない駐車場だ。如月刑事は何度も深呼吸をし、藍をやっと見つめた。

「お前、今青磁さんのことをどう思っているんだ?」

「お兄ちゃん?」

藍は青磁のことを考える。夢を与えてくれて、ずっと憧れていた人、長く想い続けた人だ。失って初めてそれを知った。