「……なっ」


なんつー馬鹿力。平手打ちを食らった頬がジンジンする。熱がジワリとそこから広がっていく。

叩かれたのは頬なのに、その勢いで持ってかれた首は、今にももげそうなほど痛い。


「な、にすんの……!」


顔を上げるとあたしに平手打ちをした背の高い女子が鬼の形相であたしの髪を掴んだ。


「えっ、やめて!」


トイレから出てきたあのカンナの事が好きだと言う女子。その女子が悲鳴をあげている。

それでもこの怪力女子は手を止めない。だからあたしも負けじと抵抗する。


「やばっ、何やってんの!?」


誰かがあたしの背後から扉を開けて驚いた声を上げている。

振り返って相手を確認したいところだけど、振り返る余裕もないし、そもそも髪を引っ張られてるせいでそんなの無理だ。


「あんた、ちょっとモテるからって生意気なんだよ!」

「うっさい。それでいつあんたに迷惑かけたのよ!」


モテたくてモテてるわけでも、好きでこの顔に生まれたわけでもない。