「…だから?」
少しでも大人な対応をしないと。
ここで流されたら、きっともう戻れなくなってしまう。
「この興奮だけ治してくださいよ」
ね、先輩。と大橋君が耳元で囁く。
「っ……」
わざと、だ。
私が耳が弱いのに気づいたから。
「自分で治して」
私は振り向かずに、ドアノブに手をかけた。
「…じゃあまた明日、先輩」
何かを企んでいるような笑顔で、彼は私に手を振った。
「…えぇ、また明日」
パタンとドアを閉め、私は逃げるように帰った。
でも、ドアを閉めるとき私は聞き逃さなかった。




” 乱れるまで、逃がさないから。 ”