「死ぬのだけは、やめろよ。」

「………関係ないよ、広斗には…。」

「関係あるよっ!」

「 …………。」

「俺が助けた命じゃん。勝手に死ぬなっ。勝手に殺すなっ!」


う……………っ。


私の目から涙が溢れ落ちる。
さらに御守りを握る手に力がこもる。

「お前が死んだら…誰が弔ってやるの?
その子のこと、誰が思い出してやんの?」

「 …………。」

「 ………。ごめん。
なんか、勝手な事言って…俺に何が分かんだよって思うよな。」

「うううん。本当に…ホントにその通りだよ。
菜乃の他にいないのに…
あの子の事を思ってあげれるのは…私だけなのに…。」

「大事にしとけよ。ソレ…。」

広斗の言葉は、優しい温度で心に広がった。

彼の笑顔は、プールの水面が反射して眩しすぎる程…眩しい。

心の氷が一気に溶けていくのが分かった。


私の中の苦しみを、悲しさを…誰かに分かって欲しいなんて思っていない。

けれど……

言いたかったのかもしれない。

こんなに、辛いって。

私を助けてくれた彼は、二度私を助けてくれた。

責める訳でもなく、慰める訳でもなく…受け入れてくれる訳でもなく、

ただ…

ありのままを、彼は気付かせてくれたような気がした。