“ 安産 ” と金の糸で刺繍された御守りは間違いなく私が持っていたものだった。

「そっか、よかった。大事なものかもって…。ちゃんと返せてよかった。」

私はそっと広斗の手から御守りを受け取ると、グッと胸に押し当てた。

「 でもね……。でもね、もう要らない。」

「 ……………。」

広斗は、ポケットに両手を突っ込むと大きくため息をついて、うなづく。

「お腹の赤ちゃん……私が堕したの。
育てられないから…。」

「 ………そっか。」

「最低でしょっ。……ひどいよね。好きな人の子供だったのに。」

「 …………。」

「人殺しなんだよ、私。
……だからね、死んでもいいって。
死んだ方がいいのかもって…あの時ね、思ったの。」

「 …………。」

広斗は黙って私を見つめた。

「プールに沈みながら、それでもいいって……。」

「 ……………。」

「ごめん。広斗君…。急にこんな話して、私どうかしてる。
初対面に近い広斗君に…こんな話。」

「広斗でいいって。」

「広斗……ごめん。引いたよねっ(苦笑)
ありがとう。御守り、拾ってくれて…。」

「引いてなんかないよ。…大丈夫、安心しろよ。 たださぁ… 」

「…………ただ…?」