瑠璃からもらった浮き草の入ったミニサイズのバケツをのぞき込みながら、商店街のアーケードを出ると、私はふっと顔を上げた。

視線の先に…この前の男の子が作業の手を止めて、こちらを見ていた。

頭にタオルを巻いて髪型がよくわからない分、彼の整った顔立ちがよくわかる。

こんな人がクラスにいたら…少しでも自分に自信のある女子は、あの手この手を使って彼に近寄ってくるに違いない。

彼は絞っていた汚れた布切れをもう一度バケツに投げ入れると、濡れた手のひらの雫を祓いながら私の方へ駆け寄ってきた。

私は……あの手、この手の使い方をよく知らない。

元カレと付き合ったのだって…彼が声を掛けてくれたから。

とくに…こういうワイルド系…?ヤンチャ系…イケメンは…苦手…というか、対応に困るというか…。

彼は私の行く手を阻むように立ち止まると、ぶっきらぼうに声を掛けてきた。


「俺のこと、覚えてない?」

「………えっ……?!」

そんな…唐突に…。

この前、追いかけられたけど…そのこと?

いや。そもそも…人違い?

……何っ?!…

同じ男の子なのに…瑠璃とは全然違う。

同じくらい華奢な腰回り…同じくらいの背丈、

同じくらいの年…?

なのに…何がこんなに違うんだろう。