なぜ目が合ったのか……。

彼の視線があまりにも強すぎたから。

Tシャツをめくり上げたその肩や腕は日焼けして、鍛えられた筋肉は彼の細く締まったシルエットにとてもバランスが取れていた。

彼は私と目を合わせたまま…手に持っていた長い鉄のパイプを地面に置く。

頭に巻いたタオルの下から覗く前髪は光を受けて……金色に透ける。

その奥から見つめる瞳は…

切れ長で目力は、半端なく強い。

鼻の付け根からシュッと上がる眉……女の子ならドキっとする。

汚れたニッカポッカ姿は、彼をひどくヤンチャに見せてはいるけれど…その顔全体は、とてつもなく甘い造りのように見えた。

たぶん…こういうのを、お世辞じゃないイケメンって言う。

抵抗があるくらいの男の色っぽさから私は思わず目をそらして、彼とは逆の方へと小走りに駆け出した。

知らない町の、知らない男の子に間違いない。


「 おいっ!! 」


私に彼は…声を掛けたような…?

掛けなかった…ような。


……何!!? ナンパ?

……仕事中に?!

……ヤンキー?!!

見た目、フツーにヤンチャだよぉぉ〜?!!

絡まれてるーーーー?!!!!

どうしよぉぉぉおおーーーーー!!!!



私は、目の前の商店街のアーケードに逃げ込んだ。