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バスを降りて走り出すと、夕顔のつると白いヒラヒラした花びらに覆われたセメント工場の廃虚が沈んで間もない夕日と一緒に視界に飛び込んで来た。

寂しげなその姿に不安がよぎる。

広斗の仕事現場の古い旅館の跡地は、もうほとんどが取り壊されて、離れの鉄骨が少しだけ残っている状態になっている。

広斗のここでの仕事も、もう終わりに近い。

更地になりつつある旅館の跡地には、コンクリと鉄骨のゴミが数カ所に分けられて集められていた。

“ ゆうがお楽座商店街 ”のアーチ型の大きな看板の前に立つと、そこは……

そこだけは……

煌々と明かりが灯り、不思議なくらいに活気づいていた。

ホッとした私は、息を整えるために胸に手を当てた。

白い蛍光灯にオレンジのスポットライトが、一つ一つのお店を照らす。

薬屋、電気屋…蕎麦屋、布団屋、ブディックなど……。