「じゃあ俺も教科書見たらできるよな?」
「…………」
「あっ、おい」
すると突然氷野は俺の教科書を奪ってきた。
かと思えば距離を狭められる。
「教える」
「……俺だけ?」
「うん」
「教科書は?」
「絶対に返さない」
首を何度も横に振り、それを頑なに拒否されてしまう。
「お、おお…!」
その様子を見た良晴は感動したように声を上げた。
これは嫌な予感がしなくもない。
「氷野さんって本当に颯斗が好きなんだな…!」
ほら、やっぱり。
良晴の声に反応した氷野は、目を見開いて顔を上げた。
「……なんで」
「本気で好きなんだよな?」
目をキラキラさせながらじっと氷野を見つめる良晴。
これは氷野も逃げられなさそうだ。



