「じゃあそこどいて」
「……は?」
昨日とは違い、俺と向かい合って座る氷野が良晴にそう言ったため、思わず声が出てしまった。
良晴も良晴で戸惑っている。
「えっと、どいてとは…どういうことでしょうか」
さっきから怯えて敬語になっている良晴をもう一度睨む氷野。
「ひっ、ど、どきますねあはは…」
確かに氷野に睨まれると心臓に悪い。
全身が凍てつくような感覚に襲われるが、良晴はさすがにビビりすぎである。
言う通り良晴が退けば、すぐさま俺の隣に氷野が座ってきた。
「本郷はあっち」
そして氷野のいた席に良晴が座る。
ただ席を移動しただけなのだが、それだけで機嫌が直ったのか不機嫌なオーラが彼女から消えていた。
むしろ今度は満足しているようにも見える。
そのような姿の氷野を見て、良晴は明らかに驚いていた。



