一度、良晴の言う氷野美雪(ひょうやみゆき)に視線をやってみる。

自分の席に座っている氷野は明らかに目立っていた。
なんといってもその容姿。


くっきりとした二重瞼に長い睫毛、スッと通った鼻筋に血色のいい唇。

さらには誰もが羨むであろう真っ白で綺麗な肌に、小さな顔。


真っ黒で長い髪がさらに氷野を“美少女”と印象付けている。



この学校で彼女と肩を並べる人物はいないほどの美少女。

そんな氷野にはひとつ欠点があった。



それは誰もが容易に近づけないほど冷たいのだ。
声から眼差しから表情から何もかも全部。

群れを嫌うのか、友達もおらず常にひとりで過ごしている。


氷野の笑った顔は一度も───

いや、一度しか見たことがない。
それも“小学校”の時だ。