「じゃあどこか行っ…」
「家まで送るから、話しながら歩こう」
氷野の言葉をあえて遮った。
タイムリミットがある中で話したほうがいい。
「わかった」
氷野は特に嫌な顔をせずに頷き、了承してくれた。
前回は送る途中で逃げるように帰られてしまったが、今日は果たしてどうなるだろうか。
ふたりで並び、歩く帰り道。
最初こそ沈黙が流れたのだが、すぐ氷野が口を開いた。
「高嶋」
一瞬ビクッと肩が跳ねた。
本当はこれ以上先の言葉を聞きたくない。
だが約束してしまった以上素直に聞くしかないのだ。
相手を傷つけずに断る技術なんて、俺には持ち合わせてないというのに。