「ここってそういう意味だったのか」
「そうだよ。意外と簡単でしょ?」
「ああ、簡単に思えてきた。
それにしても氷野って教え方上手いんだな」
てっきり厳しい口調で教えられたり、少しでも間違えようものなら睨まれるのかと思っていたが、どうやら単なる偏見に過ぎなかったようだ。
逆に申し訳ないと本人に謝りたい。
基本抑揚のない声だが細かい部分まできっちり説明してくれ、本当にわかりやすい。
間違えた箇所もその理由を分析して、ひとつひとつ理解できるよう簡単な言葉で表現してくれるため、気づけば内容を理解している自分がいた。
「上手いと思った?」
「ああ、先生よりわかりやすい」
「じゃあテスト期間の間、高嶋に教えてあげる」
「自分の勉強できなくなるだろ」
「別に家でしてるから、ちょっとぐらい大丈夫」
褒められたことが嬉しかったのか、心なしか氷野を纏うオーラが明るい気がした。



