とはいえ無表情である氷野の感情は読み取れない。
心の中では“面倒なことを引き受けてしまった”と考えている可能性だってある。
「なんか悪いな、わざわざ教えてくれて」
「私が勝手に言ったんだから気にしないで」
「いや、それでも気にするだろ」
氷野は自分の負担を何もわかっていない様子。
勉強時間が食われるのだ、普通は嫌だと思うべきなのだが。
「そんなこと言ってないで早く始める。
まずはこの問題から」
面倒くさくなったのか、本題に入る氷野。
その真っ黒な瞳は俺の解いている問題を捉え、丁寧に説明してくれた。



