「ダメ」
「……えっ?」
「絶対ダメ、私が教えるからしなくていい」
「は?なんでだよ、それだと氷野の負担増えるだろ」
勉強という魔物に向き合おうとしたのだが、バッサリ切られてしまう。
「増えない、その逆だから」
「逆…?」
「だって…高嶋との時間が増える、から」
視線を外し、また頬を赤らめて。
俯き加減の氷野が何故だか子供のように思えてしまった。
「…………」
「じゃ、じゃあここでいいよ…ありがとう」
そんな中で頭が真っ白になり言葉を失う俺に対し、氷野は逃げるようにして走り出してしまった。
『高嶋との時間が増える、から』
恥ずかしそうにしながらも、氷野は確かにそう言った。
「───は…?」
そう呟かずにはいられない。
どう考えても今の言葉には好意が込められているように感じた。