初めはここまで好きになるとは思っていなかった。
それなのに彼女を知るたび、深みにハマっていくような、どんどん惹かれている自分がいた。
「颯斗…好きっ」
甘い声をあげて。
俺の首に絡みついて。
必死でキスを受け止めようとする彼女が、さらに俺の心をかき乱しにくる。
「結構、ギリギリなんだけど」
頭がクラクラと酔うような、この感覚を俺は知らない。
ここまでめちゃくちゃにしたい衝動に駆られるのも初めてだ。
気づけば彼女を押し倒して。
自由な動きを封じて。
「え、颯斗…んっ」
もう口を開かせないようにと、またキスで塞ぐ。
何度も、繰り返して。
ある意味これは俺の負けである。
黒河に吹き込まれたとしても、行動を起こしたのは彼女───
氷野である。
そんな彼女の誘惑に堕ちた俺は、もう手遅れになっていた。
超がつくほど一途で、純粋で。
穢れを知らない。
そんな氷野を染めたくて仕方がなくなった俺を止めるものなんて、もう存在していなかった。
ふたりきりの部屋で、ハッと我に返るのは。
まだもう少し先だった───
END