その姿に対抗心が芽生えてしまった俺は、氷野の首筋を指でなぞってみた。


「……ひゃっ」

すると驚いた氷野は肩がビクッと跳ね、いつもより高い声が出ていた。


「上等じゃねぇか」

少し喧嘩腰で。
氷野との距離を詰めれば。


「どれだけ氷野が恥ずかしがってもしらねぇからな」

とことんいじめ抜いてやろうと思った。
黒河の言葉を信じた彼女が後悔するように、と。


「……っ」

その言葉だけですでに照れている氷野を横目に、始まった恋愛映画に目を向ける。


甘ったるい映画を観ながらも、隣で時折視線を外しながら恥ずかしそうにスクリーンを見たり見なかったりの繰り返しである氷野のほうが気になって、それがまたかわいくて仕方がなかった。