「今の気分は?」

とにかく今日は氷野を甘やかそうと思い、手を繋いだままの彼女に声をかけた。


だが───


「颯斗とデートできて嬉しい、これで本当に私のものだ…!」

彼女は求めているものと違う答えを出した。
今ほしい言葉はそうじゃない。

というかよく恥ずかしがらずに言えたものだ。


「聞いてるのは今食べたい気分だから、落ち着け」
「……今食べたい…?」

やっぱり伝わっていなかった。
賢いはずの氷野が、なかなか理解してくれない。


「今、何食べたいとかあるか?」
「……パスタ」

「パスタ?」
「和風のパスタ、好きなの…」


ということはつまり、イタリアン辺りか。

ちょうど映画館の近くにそういう店があったため、氷野の手を引いて向かった。