その日の夜、氷野が指定してきたのは映画館だった。
嫌な予感がしていたのだが、定番の場所で安心したのも束の間。
彼女が観たいと言ってきたのは、甘ったるいラブストーリーだったのだ。
一応予告を見たのだが、そこだけでもキスシーンなど多いこと。
嫌な予感の的中だ。
きっと氷野はあの後、黒河に相談したのだろう。
彼女がこんな映画を観たがっているとは思えない。
「颯斗…!」
次の日、家まで迎えに行けばワンピース姿の氷野がドアから飛び出してきた。
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