「わかった、じゃあ…家に入る」

俺の腕を軽く引いて、家の中へと誘導される。
案内されたのは氷野の部屋だった。


シンプルで無駄な物が置いておらず、綺麗に片付いている氷野の部屋。


「……待ってて、飲み物用意してくる」
「いや、いい」

今氷野を部屋から出したら中々帰って来なさそうな、そんな気がする。


「え、でも…」
「気を遣わなくていいから」

「……うん」


少し言い方がきつかったのか、氷野が今にも泣き出してしまいそうで。

俺と距離をあけて座った氷野は、体を小さく丸めていた。



「すぐ泣くんだな」
「だって…高嶋が、怖い」

「そりゃ氷野に苛立ってるからな」
「……っ、どうして」


氷野に近づけば、ゆっくりと顔を上げた彼女。
俺が苛立つ理由を知らないためか、また泣いている。