家に氷野の兄がいるかもしれないが、意地でも会わせてもらおう。

そう思いながら、彼女の家のインターフォンを鳴らす。


ほんの数秒待ったところで、先に玄関のドアが開いた。


「……なんで、高嶋が…」


てっきり彼女の兄が怒りながら出てくるものだと思っていたが、姿を現したのはまさかの氷野で。

制服姿のまま、目を真っ赤にして俺に駆け寄ってきた。


が、すぐにハッとして背中を向けてきたため、その腕を掴んだ。


「……氷野」
「わ、別れ話なら…しなくても、大丈夫」

ほら、まだ俺が別れたいと思っている。


「今、家に人は?」
「……え」

「家の中に人。
上がっても大丈夫か?」

「いない、けど…」
「嫌ならいつもの公園でもいい」

「嫌っ…」


完全に拒否をして、腕を振り払おうとしてくる氷野。

力が弱いため俺に敵わず、ポロポロと泣き出してしまった。