「……っ!?」
手を震わせて、目を見開いて。
公園の入り口付近で固まっている氷野の姿が目に入った。
「ぁ…ごめんなさい…」
ハッとした氷野は次の瞬間、謝りながらも泣き出してしまい。
震える手で鞄を拾っていた。
「氷野、待っ…」
「私のことはき、気にしないで…!」
氷野は絶対誤解した。
慌てて立ち上がり、彼女の元へ行こうとしたのだが。
「千智さんと、幸せにね…」
無理矢理作った彼女の笑顔は、言葉を失うほどに綺麗で。
完全に誤解したまま氷野は去ってしまった。
最悪なタイミングだ。
「……颯斗」
俺の名前を呼ぶ千智に反応できなかった。
そもそも完全に俺に非があるというのに。
どうして俺は、こんなにも腹が立っているのだろう。



