そういうことなのだ。
俺が気づかぬうちに、こんなにも氷野のことを好きになっていた。
「颯斗…?」
「悪い、ヨリ戻すとか考えられねぇ」
なるべく相手を刺激しないように優しい声で、だがはっきりと断れば。
目から大粒の涙を零してしまう千智。
「ずっと考えてた、隆二じゃなくて颯斗のほうが良いって。颯斗ともう一度やり直したいって」
「それは一時的なもんだろ、そんな勢い任せに言うべきじゃない」
今の彼氏と嫌なことがあれば、元カレのことを考えてしまうのもおかしくはない。
大事なのはその後どうするかな気がする。
「そんなことない、颯斗っ…」
「今日俺に会ったのは彼氏に対抗して、自分も浮気してやろうって気持ちがあったんじゃねぇの?」
そのため俺はハッキリとそう言い切った。
きっと千智の目的はこれだと。



