「でも、そっか…そこまであたしを…嬉しい」
「何言ってんだよ、今更」
「ねぇ颯斗、今も…引きずってる?」
手をそっと握られ、俺を見上げた彼女。
どう答えてほしいのだろうか。
「あたしたち、やり直せない?
颯斗のほうがずっといい…」
まるでこうなるように仕組まれたような、そういう気がする。
なぜなら千智は隆二の話を最初しかしていない。
そこから昔の話に持っていって…と、あまりにもできすぎている。
初めから決められていたシナリオがあるようだ。
きっと、前の俺なら手を伸ばしていたかもしれない。
けど今は───
すぐ頬を赤らめて照れたり、突然甘えてきたり。
俺から決して離れまいとする氷野のことしか考えられない。



