「か、帰っていいの…進路のことだから長くなるし……颯斗…あっ、高嶋は帰ってて」
明らかに不自然な氷野。
朝は名前で呼びたいって言ってたくせに、今は苗字で呼び直した彼女。
果たしてどうしたのだろうか。
「じゃあ、わかった。
気をつけて帰れよ」
「うん、ありがとう」
何度も頷いた後、俺は帰ることにした。
だが氷野の様子がおかしいため、なんとなく嫌な予感がする。
気のせいだと思いつつ、帰路についたのだが───
「……は?」
家からの最寄駅に着き、いつもの通り電車を降りて改札を通れば。
「颯斗…っ、連絡したのにどうして無視するの」
なぜか頬を涙で濡らしている千智の姿があった。
どうやら俺を待っていたようで。
慌ててスマホを確認すれば、確かに千智から連絡がきていた。



