時間が過ぎる度に人が多くなる中、食べ物だけでなく射的をしたりと中々充実した時間を送っていた。
「あ、次はぶどう飴…!」
「おい、先行くな」
最初こそ気を遣っていた氷野だが、今は楽しんでいる様子。
笑顔が溢れる中でぶどう飴が食べたいと、そこの屋台へと先に向かってしまう。
慌てて追いかけようとした時───
ふと見慣れた浴衣を見つけて思わず立ち止まった。
「隆二!
次は玉せん食べたい!」
「玉せんって、浴衣汚れても知らないぞ?」
その時、玉せんが好きな千智を思い出した。
祭りに行くと必ずそれを食べていた彼女。
ゆっくりと浴衣の相手を目で追えば、そこにはやっぱり千智がいた。



