「…んっ」


少し触れただけなのだが、甘い声が氷野の口から漏れる。

それが余計に感情を高ぶらせるため、触れたことに後悔した。


「……高嶋?」

熱っぽい瞳が俺を見上げる。
ここは電車、電車だからと理性を保つのに必死だ。


「悪い、当たっただけ」


くだらない嘘しかつけない俺も俺だ。

慌てて氷野から視線を背けるが、彼女の視線は一向に俺から離れない。


「…そっか」


氷野は俺の嘘を信じたのか、また身を預ける形へと変わる。

正直この体勢がきついのだ。
理性というものがグラグラになってしまう。