隣にいるだけでドキドキする。

電車に乗ってから一言も喋らなくなってしまった高嶋と、ふたり並んで車内に立っていた。


祭りの会場に近づくにつれ、多くなる人。
気づけば満員電車になっていた。


「……っ」


ガタンと大きく電車が揺らげば、人の波にのまれそうになる。

苦しくなりつつ高嶋から離れまいと思って手を伸ばそうとしたら───



「何してんだよ」

私に気づいた高嶋は私の腰に手をまわし、そのまま自分の元へと引き寄せてきた。


グッと近くふたりの距離。
心臓がうるさくて壊れてしまいそうになる。




いつもは苦手な満員電車が、今は嬉しかった。
だって高嶋との距離が近くて。

近づいても違和感などない。



「ありがとう」
「……危なっかしいな」

「ごめん…でも高嶋がこうしてくれるから」


自分の意思で、だったけれど。
満員電車を言い訳にして高嶋に身を傾けた。

この幸せがいつまで続くかわからないため、今この瞬間は高嶋を独り占めしたい。


そう思ったんだ。