「氷野は真面目なんだな」
「…別に、これが普通」
「じゃあ俺が不真面目?」
「多分」
元々感情を声で表すのが苦手なのか、一定のトーンでしか話さない氷野。
だから冷たく聞こえるのか。
もう少し抑揚があれば冷たく聞こえないかもしれない。
ほとんど帰る生徒のいなくなった校舎は静かだった。
これが逆に救われた。
もし誰かに見られたら、良からぬ噂を流れるかもしれないし氷野にも被害が及ぶ。
好きでもない男と噂を立てられたら迷惑でしかないだろう。
「それにしても案外優しいんだな。
俺のためにわざわざ嘘ついてくれたんだろ?」
最初は驚き苛立ってしまったが、冷静に考えれば俺のためを思っての行動だったのだ。
小学校で一応関わりがあったからだろうか。
いずれにせよ悪いやつではないと証明された。



