「ねぇお兄、私の話聞いてる…?
高嶋は悪い人じゃな…」
この時初めて氷野がドアの前に立つ俺を確認した。
目が合うなりお互いが固まり、動けなくなる。
そして───
「……え、なんで…高嶋が…どうして、夢…?」
ジワリと氷野の目に涙が浮かぶ。
その瞳は揺らぎながらも俺を見つめていて。
「……熱、大丈夫か?」
それ以外に言葉が思いつかなかった。
本当に情けない人間である。
「…っ、高嶋…大丈夫じゃない…」
ゆっくりと起き上がった氷野は泣き出してしまい、慌てて彼女のそばに寄る。
「ほら、無理して起きあがんなよ」
「本物だ…高嶋が来てくれたっ…」
「…っ」
熱で弱っている氷野はためらいもせず俺に抱きついてきた。
こんなことはもちろん初めてである。



