「ここは怒ってビンタでも食らわせるところだろ?」


透明な涙を流す氷野は綺麗である。
穢れのない涙に、罪悪感が膨れ上がった。


「もう俺に構うのはやめろよ」
「……え」

「傷つけることしかできねぇんだから」


氷野を突き放すことしかできない。
寄り添う彼女の体も離したところで立ち上がる。


「高嶋…」
「今日のことは忘れてほしい、本当にごめんな」

「嫌だ、だって…」
「ほら、家まで送るから行くぞ?」


そう言って笑顔を浮かべれば、氷野の目に涙が溜まり、さらに泣き出してしまう。