「…悪い」

掠れた間抜け声が自分の口から放たれる。
氷野を離してその場を去ろうと思ったその時。


「……謝らないで」

氷野自ら俺に身を寄せてきた。
予想外の行動に言葉を失う。


「高嶋が、楽になるなら…それでいい」


強がっているのがバレバレだ。
涙声の彼女は肩を震わせている。


「本当に氷野ってバカだな」
「……っ」


彼女自身で言っていた通りだ。

これ以上俺を好きでいることに、何の価値があるのだろうか。