きっと氷野も呆れたことだろう。
そう思っていたのだが、突然彼女がシャツの裾を掴んできた。
ゆっくりと確認すれば、氷野は不安げな瞳を揺らしながら俺を見つめている。
「……どうした?」
「ううん、なんでも…行こう」
平気なフリをするのは強がりだろうか。
不安そうな氷野と対照に、俺はあえていつもの調子で話す。
とはいえ気まずい空気が変わることなく、沈黙が流れるまま駅に着いてしまった。
なんとか空気を変えるべきだろうか。
最初のうちはそう思っていたのだが、考えているうちに先ほどの千智が思い出されて。
本当に自分が面倒くさいと心底思った。



