「……ねぇ」
その時。
俺の隣にいた氷野が、また少し前のように冷たい声を出した。
見ると鋭い目つきが千智を捉えており、彼女は少し怯えていた。
「男の人、待ってるよ。
放っておいていいの?」
「あっ…ごめんなさい、あたしの彼氏で…だからその、颯斗とは何もないから安心してください…あはは」
きっと歳上だと思ったのだろう。
少し怖がりつつ敬語で話す千智。
「じゃ、じゃあね颯斗!
また連絡とろう…!」
最後に焦った様子で俺に笑いかけた千智は、彼氏の元へ戻っていく。
それから俺たちの横を通り過ぎ、なんとなく気まずい空気になった。
「…氷野、悪い」
「……ううん、気にしないで」
あそこで氷野が口を開いてくれたのは正直助かった。
自分でどうにかできなかったことを惨めに思う。



