「嫌なことも断れないくらいバカなんだね」
「は…」
小さく鼻で笑われる。
まるで俺をバカにして見下したような言い方だ。
まさにその通りなのだが、さすがの俺も少しはイラっとしてしまう。
「別にどうしようが俺の勝手だろ」
少し言い方がきつかっただろうか。
ふと冷静になる自分がいた。
が、ここまで来ればもう引き返せない。
ガタッと音を立てて席を立った俺は、鞄を持って帰ろうとした。
そして氷野の横を通り過ぎようとしたその時───
「……っ!?」
彼女の手が俺のシャツの裾を掴んできた。
そのため一瞬身構えてしまう。



