「えー…つまり、俺は嘘をつかれた?」
「……そう」
ゆっくりと今の状況を理解していく。
「理由は聞いても大丈夫か?」
「……うん」
「じゃあ…何で?」
歯切れの悪い返事をする氷野に理由を聞く。
少しの沈黙が流れた後、ゆっくりと彼女は説明し始めた。
「……困ってたから」
「うん?」
「本当は行きたくなかったんでしょ」
相変わらず冷たい声。
だがその声が少し震えている気がする。
「無理矢理誘われたカラオケ」
「聞いてたのか」
「聞こえてたの」
俺を見つめる揺らがない瞳。
ドアの近くで離す氷野の声が教室内に響き、はっきりと耳に届く。



