「待って高嶋、早く行きなよ。
じゃないと許さないから」

「彩乃、どうして氷野さん誘いたがってるの?」
「ほんとほんと、お互い気まずいだけじゃない?」


そんな黒河の話を近くで聞いていたふたりの女子が彼女に話しかける。


「全然気まずくないよ!
あの子の純粋さ知ったら本当、びっくりするから!

本気で悶えるから!てことで高嶋、行ってこい!」


黒河は真っ向からそれを否定し、俺に行けと命じてくる。

が、今の黒河の言葉を聞いて悪い気分にはならなかったため、大人しく従うことにした。


教室を出た後、少し歩けば氷野の後ろ姿が見えた。

「氷野」

特に叫ぶこともなく、大きめの声で名前を呼べば華奢な足の動きが止まる。