「……高嶋」
「ん?」
「わ、忘れて…今の、その…恥ずかしくて」
隠す手から少し顔を覗かせ、懇願する氷野の目は涙目で。
一瞬、ほぼ無意識のうちに彼女に手を伸ばしかけた。
その途中でハッと我に返り、その手を引っ込める。
結構…いや、本気でこいつは危ない。
男の理性を吹き飛ばすのが特技なのかレベルである。
「ああ、別に気にしてねぇから」
なんて言いつつも窓の外に視線を向けた。
日に日に見えてくる氷野の素顔に、心が揺れ動いているのが自分でもわかる。
ただ中途半端な気持ちで氷野に触れることはできないと思い直し、彼女を受け入れようと思う気持ちを自分の中でかき消していた。