「美雪が俺じゃなくてこの男の味方を…」

「ごめん高嶋、お兄は少しズレてるだけだから気にしないで」


いや、氷野を溺愛しすぎているだけだと思うが。
きっとこれが残念系イケメンというのだろう。

結局まだブツブツ文句を言いつつも、ようやく動き出した車。


車内に気まずい沈黙が流れる中、突然氷野が俺の肩を突っついてきた。


「……っ」

パッと氷野に視線を向ければ、彼女の伸ばされた手が大胆にも俺の手に添えてきたのだ。


少し冷たい彼女の手のひら。
指先は緊張しているためか微かに震えている。

心の中でため息を吐いた後、俺は諦めて自分の手を後部座席の中央に置いた。

こうすれば彼女の体勢も楽でいられるだろうと。